コンセプトBARを巡るようになったことで、疑問に思うようになったことがあります。
それは「そもそも『BARの定義』って何だろう?」ということです。
インターネットで調べたり、いくつか文献にもあたってみましたが、イマイチ明確な回答がわかりません。
素人が自分だけで考えていても埒が明かないということで、本職のバーテンダーさんに聞いてみることにしました。
BARをBARならしめる3つの要素
「実際のところ、『こうなっていれば、BARですよ。』という明確な基準を引くのは難しいんです。」と前置きしたうえで、「一応、BARであるために必要と言われる3つの要素があります。」と話してくれました。
このバーテンダーさんによると、BARに必要な3要素とは以下の3つです。
1 カウンターがある
2 バーテンダーがいる
3 アルコールを提供する
1 カウンターがある
バーテンダーが立っている側と、客が座る側を隔てるバーカウンターが存在していることが1つ目の要件です。
これには、サービスを提供する側とサービスを受ける側で線を引くという意味もあります。
なので、カウンターの無い大衆居酒屋などは、BARとは区別がしやすいですね。
少し法律的な話をすると、営業許可を取るにあたって、それが風営法の許可を取らなければならないのか、それとも深夜酒類提供飲食店営業の届出で済むのかという点にも関わってきます。
※この点については行政書士さん等に聞いた方が詳しいかと思います。
とはいえ、仮にバーカウンターがあったとしても、そのお店がカウンター席のみのこじんまりしたスタイルなのか、それともカウンター席よりもテーブル席が多く、居酒屋のように大人数でワイワイするスタイルなのかという違いがあります。
そのため、カウンターの存在は1つの要素であるけれど、それだけで判断するのは難しいところだということです。
2 バーテンダーがいる
知り合いのバーテンダーさんも、これを要素の1つに挙げていましたが、自分としては、この点が一番大きなポイントではないかと思います。
バーテンダーを英語にすると「BAR TENDER」となります。
この「TENDER」とは、「お世話をする人」とか「世話人」といった意味になります。
つまり、バーテンダーとは、「BARに来た人の世話役」といった立ち位置の人間という事です。
自分がカウンターに座った時、今の気分にピッタリのカクテルを提案してくれる、という役割もありますが、それだけではありません。
軽く世間話をしてみたり、時には愚痴を聞いてくれたりと、そういう意味で「お世話をしてくれる人」なわけですね。
ただし、バーカウンターの項目で述べた通り、あくまでカウンターの向こうとこちらではきちんと線を引きます。
話は聞くけれど、必要以上に深入りをしないというのもバーテンダーには大切だという事ですね。
ちなみに、バーテンダーをバーテンと略してしまうのは、良くないんだそうです。
バーテンというのは、風来坊を意味する「フーテン」から来ているスラングというか、一種の侮蔑用語みたいなものでもあるそうなんですね。
「BARTENDER」という英語の綴りを考えてみても、「BARTEN」で切ってしまったら変ですよね。
私もBARに行き始めたころは、何の気なしに「バーテン」と略してしまう事がありました。
ですが、「BARTENDER」の意味を知ってからは、そこはきっちりとするようにしています。
3 アルコールを提供する
アルコール類の提供があるという点も、BARに必要な要素の1つです。
飲めない人間からすれば「別にカウンターがあって、バーテンダーがいるだけで良いんじゃない?」とも思うのですが、世間的には重要なファクターのようですね。
もっとも、単純にアルコールを提供するだけであれば、他の形態のお店も色々とあります。
そこに、前述の2つの要素が加わることで、一応の線引きをしているというわけですね。
ただ、話を聞いたバーテンダーさんも言っていたことですが、「時として線引きは曖昧なものになる」ということです。
BARの3つの要素を兼ね備えていたとしてもBARとは名乗っていないお店もありますし、その逆も然りというのが実情です。
「バー」と「バル」の違いは?
もう一つ疑問に思っていた「バー」と「バル」の違いについても訪ねてみました。
この2つはアルファベットにすると、どちらも同じ「BAR」なんですよね。
「それは、もともとの語源に依るところが大きいです。」
「バーというのはBARを英語で読んだもの、対してバルとはスペイン語で読んだものなんです。」
そのような事情があるため、それぞれの国でのスタイルが影響しているのが一般的のようです。
まず、アメリカのバースタイルといえば、私がよく行くようなお店のスタイルと考えて間違いはないようです。
一人でカウンターに座って、軽く雑談をしながら、少しずつカクテルなどを楽しむというものですね。
それに対して、スペインのバルスタイルでは、片手に食事を持ちながら、席をある程度自由に移動して、他のお客さんともワイワイやりながら楽しむという所から来ているようです。
日本でいえば、居酒屋文化に近いのかもしれませんね。
「もっとも、これについても境界線が曖昧な部分は多いんです。特にテーブル席が多いお店では、バーなのかバルなのかの線引きが難しいですね。」
最終的には「曖昧な部分も多い」という結論になりましたが、必ずしもきっちり白黒をつけなければならないわけではありません。
今回は、知り合いのバーテンダーさんと話してみて、BARについてある程度の輪郭が掴めたので良かったかなという感じです。
今日も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。